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Panda-Kis 2nd

ぱとのブログです。TV番組の感想はリアルタイムで見れた番組のみUPします。

ストーリーセラー

自己研鑽


p.57
「君は翼を持ってるよ。僕は君が飛んでるところを見てみたい」
彼が彼女に、専業の小説家になることを勧めるシーン。誰よりも彼は彼女を想っていて、誰よりも彼女の書く小説を愛している。それを彼女も誰よりも理解している。理解しているからこそ、こうやって言われることはとてもとても嬉しいことだと思う。そして、自信にもなる。自分を一番想ってくれていて、自分も想っている相手に言われたら、本当に嬉しい。信じてくれている誰かがいるって心強いし、迷っていたり、人生の分岐点に立っていたりするとき、自分を信じてくれている人に背中を押してもらえることほどありがたいことはない。
p.66
「後ろにあなたがいるからだ、と彼女は言う。あなたが支えてくれるから書けるし、戦えるし、立てる。」
交渉をしたあとに吐くセリフである。上に書いたことを言い換えられているような言い回しだと感じた。その一方で、その逆にもとれる。自分が心から信じている人、自分が心から信じられる人がそばにいてくれて、そんな人が自分を信じてくれている。こんな心強い事象が他にあるだろうか。戦っているとき、彼女は自分の心を削っているんだと思う。ぼろぼろになりながら、立ち向かわなければならない。もしかしたら、戦っているときは無意識のことが彼女の中で起きているのかもしれない。でも、その戦いが終われば、彼女の心は疲れ切っていて、起き上がれない状態になっていて、でも、切り替えて立ち上がって、書かなければならない。1人では立てなくても、そばに誰かがいてくれて、なおかつその誰かが信じあっている人なら、この上ない心強さである。そして、ここでは、「そば」ではなく「後ろ」というセリフになっている。「倒れても、後ろで支えてくれている」。そんなことを連想させてくれているように思えた。
p.99 
衝撃的な文面。
「あなたがすき」がたくさん書かれている。「あなたが好き」ではなく「あなたがすき」。果たして、意味があるのだろうか。わたしは大学生のとき、英詩のゼミに属していた。そこで、詩についてみっちりと学んだのだが、その中で詩を書くことになった。わたしは、そこで漢字・ひらがな・カタカナに執着した。同じ読み方でも、字面は全く違う。したがって、印象も全く異なる。硬いとか柔らかいとか。でも、ここで「好き」ではなく「すき」であることに意味があるのだろうかと考えてみる。意味がないとは決して思えなかった。なぜなら、「元気」とか「幸せ」は漢字で表記されているからである。このページを見たとき、死の直前だったから、変換する余力がなかったのかと思った。しかし、変換している文字がある。意味がないわけがない。何を意味しているのだろうか。
p.148
「……甘やかしすぎだよ、ちょっと」
「俺が一番好きな作家の旦那になれたんだよ。溺愛するでしょ」
彼女の仕事を徹底的にサポートする彼。本当に愛されてるなって思えるし、「溺愛」って言われたら、もう委ねちゃうよね。家庭の中でのルールは家庭の中で認識されていて、うまく運んでいるなら、周りがとやかくいう筋合いはない。彼女が少し不安になるくらいバックアップしてくれる彼。いい環境だなあって、ここだけ断片的にとれば、思う。
p.151 
ぎょっとするような悪意の籠ったクラクションが空気を切り裂いた
p.152 
軽いクラクションが背後でなった
有川作品ですごいなって思うのは、言葉の言い回しである。直接的に表現されているものもあれば、間接的に表現されているものもある。どちらの表現も、その状況や状態が目に浮かぶからすごい。それから、対にするのもすごくわかりやすい。今回ピックアップした箇所は完全に対になっているわけではないかも知れないけれど、「悪意の籠ったクラクション」「軽いクラクション」という、どんな音かがすぐにイメージできてしまう。すごいなあとしみじみ思う。完全に対になっていないのに、すぐに情景が浮かぶようになっている。こう思うのはこの作品だけではない。有川作品を読むと、毎回有川さんの表現力を強く感じる。
p.167 
さらに衝撃的な文面
「覆れ」が敷きつめられたページ。やはり、「すき」がひらがなだったことって、絶対に意味があったと思ってしまった。覆れが敷きつめられると、非常に固く、重く、強く見える。それから、字体が99ページと違う。ゴシック体なのかな。もともとの字体とは違って、はっきりとした線になるから、固い感じや重い感じが増す。字体を変えたのは、そんな意味が含まれていると思っていていいのだろうか。
p.200
「態度変えんなよ!俺を腫れ物にするなよ!頼むからわがまま言えよ!」
良い妻になろうとした彼女へ向けた言葉。彼は重い病を患っているをだから、甘えてはいけない。負担をかけないようにしなければならない。そんな風に思い、我慢していた。彼女はそれが必要だと思っていた。でも、彼は違う。今までみたいに彼女を溺愛して、甘やかしたい 。今までと何も変わらず、過ごしたい、きっとそう思っていたのだろう。何か悪いことがあったとき、人はそれに触れないようにする。負担をかけないようにする。だけど、逆にそれが負担になったりする。今まで通りにしてくれた方が、気が紛れるのかもしれない。


さて。
2016年1冊目でした。
この小説には人の名前が出てきません。だから、名前によってイメージがわかない。それって、けっこう盲点な気がした。今まで読んできた有川作品の中に名前がないものは皆無だった。たしかに、話の中の名前が、自分の知り合いだったりしたら、その人を連想してしまうかもしれない。名前の力の強さを感じた。