Panda-Kis 2nd

ぱとのブログです。TV番組の感想はリアルタイムで見れた番組のみUPします。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年


p.248
誰だって重い荷物は好きじゃないさ。でも、気がついたときは重い荷物だ。それが人生だ。
これ、なんとも言えないけど、すごく共感できるなあって思った。身軽でいたいって思うのに、気がついたら重荷をたくさん背負っていることって多いなって思うの。それは、誰しもが1人では生きることができなくて、ほとんどの場合好き勝手にはできない。ルールの中で動いていて、そのルールに反する人は排斥されたり、嫌な顔をされたりする。だから、1人にならないように、周りに気を遣わないといけない。1人になってもいいと思っていても、社会で生きていくためには、最低限の気を使う必要がある。嫌だなあと思っていても、やらないといけないこともたくさんあるし、理不尽なことだってたくさんある。そして、経験を積めば積むほど、重い荷物がのしかかってくる。重い荷物を嫌なものとして、扱うか、重い荷物を良いものとして扱うか、それもまた、それぞれの人生だと思う。

p.315
「生きている限り個性は誰にでもある。それが外から見えやすい人と、見えにくい人がいるだけだよ」
これを読んだ瞬間玉森くんが脳裏をよぎりました。努力してるのに、客観的には見えにくい。これも個性だよね?
この言葉、ごもっともなことだなあって思うの。みんなひとりひとり違う人生を歩んできて、いろいろな考え方をする。いろいろな性格が出来上がっている。たとえ、目立つ存在ではなかったとしても、個性として目立たないだけで、個性は必ずある。個性を伸ばすってよく聞くけど、わたしはあんまりこの意味がよくわからないなあとよく思ってた。個性って、誰かがどうこうして伸びるのものではないような気がしてたから。だけど、それは自分の個性に気が付いている人は各々で伸ばせるかもしれないけど、自分に個性がないって思っている人や、個性をマイナスに捉えている人もいて、後者に関しては、自分から伸ばすことが難しい。そういう人たちの個性に他の人が気が付いてあげることや、個性を大切にしてあげること、マイナスだと思っている個性をプラスに転換してあげること、そして、それを伸ばしてあげることが必要なのかなって思えた。相手の個性も自分の個性も、お互いが生きる上で必要不可欠なものだから、相手の個性をしっかり尊重できるような人になりたい。

p.321
「私たちはこうして生き残ったんだよ。君も私も。そして生き残った人間には生き残った人間が果たさなくちゃならない責務がある。それはね、できるだけこのまましっかりここに生きることなんだよ。たとていろんなことが不完全にしかできないとしても」
「お前が死にたいと無駄に生きた今日は、昨日死んだやつが一生懸命生きたかった明日なんだ」って、よく聞くセリフがあるけど、それよりもしっくりくる言い回しだった。去年、右も左もわからない人見知り社会人一年目のわたしに、「存在してるだけでいいから」って、先輩は声を掛けてくださった。とにかく、存在していることで、少しずつ適応していく。そして、プラスαのことができるように努力する。それは、もちろん亡くなった人のためではない。だけど、生きたいと思っていた人が少なからず不本意に亡くなっている中で、やはり大事なことなのかもしれない。特にこの物語では、とても大切に想っていた友人が亡くなっている。果たして、その友人はまだこの世を生きたいと思っていたのだろうか。それを確認する術はもうない。生きたかったか、生きたくなかったか、どちらにせよ、友人の分も生きることが、彼女にできる、最後のことなのだと思う。


なかなか、考えさせられる内容でした。というか、考えないと読めない内容だったっていう方が、正しい気がする。すごく、表現が緻密だなって思った。直接的な表現より、間接的な表現が多い気がして、それは、読み手それぞれの脳で、誤差を生みつつも、リアルに体現されている気がする。読めば読むほど、次は?次は?ってわたしのページをめくる速度が速まっているのがわかった。最終的に、つくると沙羅がどうなったのかは描かれていない。映画やドラマで言えば、最後に画面が白くなっていってエンドロールを迎える終わり方である。わたしは、これが、あまり好きではない。だから、この物語の終わり方も、もやもやしている。はっきり、ゴールを見せて終わってほしい。あとは想像で…っていうのがわたしの中では、非常に不燃焼なのである。しかし、それを除けば、とても面白かった。人間は何のために生きるのか。人間には誰しも、生きる意味がある。個性がある。知らぬ間に、誰かの役に立っている。だから、とにかく生きて、そこに存在することが、何よりも大切なのである。存在価値のない人などいない。わたしは、それを忘れずにいたいと思う。