- 作者: 本谷有希子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/05/15
- メディア: 文庫
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短編集。
司書さんに薦められて読んでみた。
とにかく、想像力が必要だった。
たぶん、今までのわたしだったら、難しかったかもしれない(文学が苦手すぎて、言語学で論文書いた人)。
ひとつひとつの短編集に、きちんと意味が込められているんだけど、直接的な表現はほとんどなくて、ピンとくるものもあれば、全く分からずに読み終わったものもあった。
例えば、"How to burden the girl"だ。内容がわからないわけではない。何を暗示しているのかが、全く分からなかった。大抵、最後に気がつくような内容が書かれているのに、このタイトルだけはわからない。助けてもらえなかったことへの嫌悪感?それとも、、、何?
正直、それぞれの短編集に気持ち悪さがある。爽やかな気持ちで読めるものってあったかなってくらいに。現実離れしているようで、すごく密接していて、違和感があるようで、違和感なく読める。とても不思議なものだった。
この著者さんの本、他にも読んでみたいかも。
人間袋とじ
p.49
自分の足で、五本の指でちゃんと立つスタンバイをしている。
指先がくっついていて これを剥がす、という設定。この設定からまず気持ち悪さを感じる人もいると思う。おそらく、これは人と人の依存を表していると思うの。剥がすことによって、自立を表しているんだと思うんだよね。人間はひとりでは生きられないけど、別れと出会いを繰り返す生き物で、その時々で一緒にいられる時があれば、いられない時もある。自立と依存の間にいるのが人間なのかなあって改めて思った話だった。
亡霊病
p.88 【亡霊病】とは、その人が人生で一番幸せかもしれない、という瞬間にかかる率が高いと言われています。
一番心に残ったのがこの短編集。幸せになった時に、理性を失って、自分の思っていることかは わからない、暴言以上の暴言を吐く。そして、亡くなる。この暴言は本人が思っていること、または思っていたことなのだろうか。それから、暴言を吐くのが、なぜ幸せな時なのだろうか。「○○に感謝しています」とかって、偽善ってことを言いたいのだろうか。幸せの裏には、何かしらの恨みなどがあるということなのだろうか。それとも、幸せになれなかった人の気持ちが宿って、恨みなどを言うのだろうか。
p. 95 患者は病気を隠そうとして、日常と同じ行動を取ろうとすることがあります。
日常に不満があっても、愚痴をこぼさずにいる人がいるということだろうか。この文のあとに、この病気の人を見つけたら直ちに対処するようにって書かれているんだけど、それは不満をちゃんと聞いてあげるということを意味してるのだろうか。
この短編だけでなく、全体的にとにかく疑問符が多く浮き上がる短編集だった。すっきりする内容ではないけれど、考えさせられる内容だったから面白い。
頭をフル回転させながら本を読みたい人にはうってつけだと思う。